虫の知らせというべきか、母のカンというべきか。なんとなく双子たちが帰ってきたような気がして、マーテルの部屋へと向かう。予感した通り、かわいい双子たちとクルールがそろってマーテル像の前に立っていた。
「ディオ、メル、おかえりなさい」
わたしの声に、そろって振り向く。
「ただいま……」
「……ただいま」
「ウキュ……」
きちんと返事をしてくれたのはいいけれど、二人と一匹とも元気がない。この間は風の精霊の試練を受けたのだと楽しそうにしていたのだけれど。
しょんぼりとうつむくみんなを、まとめて腕を広げて抱きしめる。
「今日もおつかれさま。今日のごはんはとうふステーキよ。食べながら、また二人の冒険のお話を聞かせてちょうだいね」
ぽんぽん、と背中をたたいてあげると、二人ともすりすりとわたしの肩に頭を擦り付けて甘えてくる。ディオとメルのひたいにそれぞれキスをしてあげたら、ようやく二人の顔に笑顔が戻ってきたようだった。
「おかあさん……真実って、大事なものなのかな?」
デザートのぷにぷにプリンまで食べ終えて、食後のお茶でほっとひといきついたあと。急に、メルがそんなことを言い出した。
「知らなければよかった真実だったのかも、しれないの。でも、知ったことで、あのふたりがようやく眠りにつけたんだと思うと……わからないの」
「……なにがあったの?」
マグを両手で抱えて、じっと考え込むメルに問いかける。答えは、むずかしい顔をして紅茶をスプーンでくるくるかき回すディオからかえってきた。
「たのまれごとを引き受けたんだ。おもいでのはなを摘んできてくれって。でも、その花が……」
「ダメなくすりの、原料だったんだって。……メモリーさんのおかあさん、すごく後悔してた。明かしてはいけない真実も、あるのね」
「でも、メモリーさんはさいごに、おかあさんはいい母親だったって言ってた。それはメモリーさんにとって真実だって」
「……真実って、なんだろう……」
そこまで言うと、二人ともまた暗い顔で黙ってしまった。
最近この子たちは、大人でも迷うような悩みを見せるようになった。きっとそれも、精霊の試練の一部なのだろう。わたしはこの子たちの親として、少しでも力になってあげたい。
「おかあさんは、こう考えるかなあ。真実と事実は違うから、その人がそう確信していれば、たとえ事実がどうであろうと、それがその人にとっての真実なんじゃないかって」
少しでも、わたしの言葉が足しになれば。
何にも染まっていない瞳で見つめてくる双子に、愛をこめて言葉を贈るのだ。
「もちろん、おかあさんの言葉が絶対正しいなんてことはないよ。二人はこれから大人になっていくんだから、いろんな話を聞いて、いろんな経験をして、自分だけの答えを出していこうね」