🗐 てがろぐ

ほぼ壁打ちXみたいな場所です

No.539, No.538, No.537, No.536, No.535, No.534, No.5337件]

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ちなみに人魚姫症候群、普通に人間も罹るけど、人間の場合赤ちゃんのうちに母親か父親が口づければ大抵治るので問題ない 今回刀剣男士であり、審神者が刀を基本道具として見ているタイプの審神者だったせいでその手段が取れなかった(刀を愛してるタイプの審神者なら多分刀の主従愛(一部除く)と自分の刀への愛情で解決した)
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まろすいはまだニコイチ 大慶くんはよき理解者
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「失礼ですね、僕にだって多少の身びいきはありますよ。……貴方にだって」
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「どういう意味でかは差し置いて、俺は宗三が好きだ」
「……どういう意味でか、は、はっきりさせない方がいいだろう、今はまだ」
その中にはもしかしたら慕情も含むのかもしれない。けれど、それを慕情だと認めてしまうともし失恋した際に泡になって消えてしまう。なのでひとまず感情の整理は置いておくことにした。その心に名前をつけるのは、心が通ってからでいい。
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人魚姫症候群について調べた宗三さんは後日真っ赤になるよ
「これが、恋愛感情になるのかは知りませんが……少なくとも僕は、貴方を手放し難いと思っていますよ」
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 未だ苦しそうに長谷部は呻く。まるで溺れかけていたかのような息苦しさで、体が酸素を求めて痙攣していた。
 そして気づく。自分が苦しむたび聞こえるこの声は何だと。咳き込むたび、息を求めて喘ぐたび、苦しげに呻く声は……
「へし切、貴方、声が……」
「ぁ、こ、え、でてる、か?」
 長谷部は呆然と呟く宗三の方を見る。未だにぎゅっと握られたままの手がそろそろ痛い。久し振りに、いや顕現して初めて聞く自分の声は、あまり自分のものだという実感がわかなかった。
「おい、手。そろそろ痛い。離せ」
「あ、あぁ……すみません」
 まだどこか呆然としながら、言われたとおり宗三は長谷部の手を離す。そろそろあの窒息しそうな苦しさも落ち着いて、長谷部はようやくまともにものを考えられるようになってきた。
 主は言っていた。完治の方法は、想い合う誰かと両思いになることだと。
 人魚姫の逸話通り、想い合うものとの口づけが条件だったのだろう。感情は、恋愛感情でなくとも構わないとも言っていた。幸いにして、こいつも俺に対して何らかの情を抱いていてくれていたということだろう。……それが、俺と同じ、形容しがたい何かでなくとも。
「お前、知っていたのか」
「何がですか?」
 長谷部が問いかけるが、宗三は意味がわからずに首を傾げる。その様子に変わったところはなく、本当に何も知らないのだろう。
「というか、貴方、声、出るようになったんですか? なぜ?」
 理由がわからないことが不安なのか、心配さが滲み出るような表情で宗三が問う。完治条件が条件だけに素直に言うのも憚られて、長谷部はつい煽るように唇を釣り上げて笑ってしまった。
「さあ? 愛の力かもな」
「愛って、貴方頭でも打ちました? そんなこと言う柄じゃないでしょう」
「知りたきゃ自分で調べろ。俺のこの病は【人魚姫症候群】と言うらしい」
「病気、だったんです? 先天的な欠損ではなく」
 宗三のその言葉を聞いて、主は他の刀には病のことを伝えていなかったのだな、と思い知る。おそらく余計な先入観を与えて、こちらに不都合がおこらないようにしたのだと思うが、少しだけ寂しい気持ちになった。
「……そうだ。先天性の異常だが、治る手段はあると伺っていた。お前のさっきのアレは、嫌がらせどころか格好の助け舟だったな」
 手を握り開きを繰り返し、体がどこまで動けるか確認する。指や足首など末端は多少動くようだが、腕をあげようとしても異様に重たく感じて動かなかった。まだまだ手入れに時間がかかるのだろう。首は動くので手入れ時間を確認すると、あと3時間と出ていた。
 宗三は最初、何を言われているのか理解できていないようだったが、しばらくするとぽっと顔を赤らめて、恥じ入るように両手で顔を覆い隠してしまった。
「ああ、だから、人魚姫……」
「助かったぞ、王子様?」
「やめてください、王子様なんて柄じゃないですよ、僕は」
 宗三は顔を覆っていた手を外したが、まだ頬に赤みが残っている。それを愉快な心地で眺めながら、一応フォローのつもりで告げてやった。
「さっきは調べろといったが、ネタバラシをしてやると、別にお互いにあるのは恋愛感情でなくてもいいらしい。ある程度互いに情がなくてはいけないらしいが、それが愛でなくともよいのだと。条件が緩くて助かった」
 でなければ、こんなあっさり治るわけがないだろう。
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 薬研に導かれるまま連れられたのは、どうやら居住区の一角だったようだ。そのうちの一部屋に招き入れられる。一通りの家具が揃っているだけの、比較的殺風景な部屋の中に通されて、そこら辺に座っといてくれやと座布団だけ渡される。とりあえず長谷部は従うほかないので、座卓の前にそれを敷いて座った。
「あんたはちょっとここで待っててくれ。全員を広間に集めたらお披露目といこうや」
 そう行って部屋を出ていこうとする薬研を、長谷部はあわてて引き止める。くい、と白衣の裾を引っ張られて、薬研は動きを止めた。
「どうした? 旦那」
 はく、と何か言いたげに長谷部の口が動く。そうだ声が出ないのだ、と悔しそうに顔を歪めて、長谷部は薬研の手を取り、手のひらに文字を書いた。
『メモはないか』
「ああ、筆談するのに必要か。ならこれごとやるよ。好きに使ってくれ」
 薬研は文机から手のひら大のメモ帳とボールペンを取り出すと、そのまま長谷部に渡す。早速そのうちの一枚にペンを走らせた。
『助かる。これから迷惑をかけると思う。すまない』
「何、あんたがそんなナリで顕現しちまったのはあんたのせいじゃないだろ。気にすんな」
 ぐしゃり、と頭を混ぜるように撫でられる。まるで子どもにするかのようなその扱いに長谷部はむっとしてみせ、頭の上の手を払い除けた。
「おっと、すまんな。つい弟たちと同じ扱いしちまった。まあ、とりあえず少し待ってろ」
 今度は引き止める理由もなく、薬研は部屋を出ていった。長谷部はひとり、部屋の中でため息をつく。
 この本丸に今何口刀が揃っていて、どんな奴らがいるのか。主のために働くのは当然だが、それと並行して仲間ともある程度交流して、何らかの気持ちを通じあわせる必要もあるだろう。できれば、それこそ薬研のような縁ある刀剣であればやりやすいのかもしれないが、しかし織田縁も黒田縁も思い返すと一筋も二筋も行かない奴らばかりで、逆に拗れる可能性はある。
 そもそも、織田の奴ら相手に素直になれる気がしないし、黒田のことは忘れていたい。
 ならこの本丸で一から関係を作ればいいのかもしれないが、へし切長谷部というのはそういうことが特別苦手だった。だってそうだろう。へし切長谷部の価値観としては、まず主のお役に立つのが一番だ。仲間というのは競い合い高め合う相手であり、馴れ合う対象ではない。
 長谷部がつらつらと今後のことについて考えていると、薬研が戻ってきた。
「待たせたな。一応今いる奴らには全員声かけて、広間に集合してもらってる。あんたのその不具合は周知しておいたほうがいいだろ。さあ、行くぜ」
 ついてきな、と先導する薬研の後ろに付き従って、長谷部は進む。いくつかの曲がり角を曲がった突き当りに、他の部屋より広そうな入り口があった。ここが広間なんだろう。薬研は躊躇いなくその戸に手をかけ、開く。
 長谷部が薬研に引き続いて部屋の中に入ると、部屋の中の視線が一斉に向けられるのを感じた。おおよそは新しい刀への好奇心といった体だが、たまにそれとは別の視線を感じ取って、それらに目を向ける。ぱっと目につくのは、少し驚いたように軽く目を見開いた宗三左文字、ニヤニヤと喜色を見せる厚藤四郎か。宗三の隣には小夜も見かけたが、こちらは特に感情の伺えない表情をしており、何を考えているのかわからない。
 ひとまず見知った顔はそれくらいか、と判断し、前に向き直る。薬研に促され、集まった刀たちの前に立たされた。
「あー、一部の奴は知ってるかと思うが、先日鍛刀されたへし切長谷部だ。なんでこいつだけ新刀お披露目会みたいなことなぞやるのかというと、ちょいとこいつには問題があってな。こいつは口がきけん。基本的に意思疎通は筆談を通してになるだろう。それを心得ておいてくれ」
 ざわ、とにわかにざわめき立つ。それぞれ縁故のものとひそひそ話をしていたようだが、やおらその中から一本、ひょろりと細長い腕が上がる。
「どうした? 宗三」
「口が聞けないのに、顕現させるなんて……実戦にも出さず、本丸の中で飼い殺しにでもするつもりなんですか?」
 そのありありと不服を湛えた物言いに、つい長谷部は吹き出してしまう。笑い事じゃない、とばかりに宗三に睨まれるが、いかにもこいつらしい言い分だなと思うと口の端が緩むのは止められなかった。
 宗三の言葉を受けて、いや、と薬研は首を振る。
「大将はちゃんと戦にも出す心持ちだ。口が聞けないぶん連携に不安が残るが、俺たちもへし切も慣れていくしかないだろう」
「ふん、厄介な」
 ひとまず納得のいく返答は得られたのか、宗三はしぶしぶ手を下ろす。戦に出さなければ飼い殺しと言い、出すとなると厄介だとのたまう。こいつはどうなれば正解だというのかと呆れて顔を見るが、きっと本刀にも落とし所などないのだろう、不貞腐れた顔で黙り込んでいた。
「とりあえず、こいつにも今までどおり部屋をあてがって生活してもらうんだが……最初のうちは大変だろう。口が聞けないとあっちゃ、ひとを呼ぶのにも一苦労だ。だから、俺が本丸を出ているときに助けに入ってくれるやつが数人ほしいんだが」
「おう。俺、やってもいいぜ。長谷部とは多少の縁もあるしな」
 真っ先に、厚藤四郎の声が上がる。長谷部としても願ってもない。厚と薬研は、こちらに踏み込んで来すぎない。その距離感がありがたかった。
 けれど、その次に上がった声に、長谷部は少し戸惑ってしまう。
「僕も、世話を焼いてやってもいいですよ。貴方たち二振りとも短刀でしょう。揃って出陣する可能性も高い。なら別刀種からも一振り手伝いがいてもいいでしょう」
 どうせ暇ですからね、と嘯く宗三の表情から真意を読み取ろうとするも、何も伺えない。さて、宗三左文字とやらは、進んでひとの世話を焼こうとするほどお節介な刀だったか。どちらかというと、面倒ごとをひとに押し付けて、それを横目で観察しているだけという刀だった気がするが。
「ふたりとも、助かる。なら後でローテーションでも組むか。出陣や遠征が絡むようであれば都度相談ってことで」
 そこで、薬研が長谷部に向き直る。
「あんたにゃ悪いが、最初のうち……そうだな、一ヶ月くらいは世話役と寝起きしてくれ。窮屈かもしれんが、しばらくは困ることも出てくるだろうし、そんなときにいちいちひとを探さないといけないのも不便だろう。ヒトとしての生活を覚えるまでの辛抱だ」
 薬研にそう説かれ、長谷部はうんと頷く。言っていることは最もだし、むしろ己の欠陥のために周りに迷惑をかけてしまう、申し訳なく思うのは長谷部の方だった。

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