米もすっかり炊きあがり、おかずや付け合せもほぼほぼ完成し、あとは皿に盛り付けるだけという段階で厨に顔を出した刀を見て、すぐに興味を失う。この刀がこのくらいの時間に厨に顔を出すのは、いつものことだった。
「やあ、また来たのかい。宗三くん」
律儀に声をかける燭台切を横目に見ながら、自分は目の前の鍋の味を見る。うん、今日も及第点だ。
「ええ。場所を少し借りられます?」
「勿論だよ。好きな相手には手ずから美味しいものを作ってあげたいもんねえ」
ニコニコとしながら燭台切はそんなことを言うが、さてこの男がそんな殊勝なタマか、と内心で訝しむ。
表向きの理由は確かにそうなんだろう。しかし、この執着の強い、嫉妬深い男が、それだけの理由で毎回厨まで来ているとは思えなかった。
宗三は冷蔵庫からいくつか葉物の野菜と、豆の水煮を取り出すと、葉物を手で一口大に千切る。それに豆の水煮を乗せて、ドレッシングを掛ける。料理というほどのものでもない、大して手をかけてもいない、長谷部の好物というわけでもない、ただ「自分だけが手をかけたものを食わせる」という目的を果たすためだけの一品だった。
そして、燭台切からは見えない場所で、包丁の刃先で指先を切る。ぽたり、と血液が一滴その小皿に垂れたのを見てしまい、つい盛大に顔を顰めてしまった。
「あれ、歌仙くん、どうしたんだい?」
宗三の様子には気づかないくせに、こちらの表情には気づいた燭台切に不思議そうな顔をされる。
「……別に、何でもないよ」
ふい、と宗三からも燭台切からも顔を逸らして、答える。
長谷部がどうなろうとあまり興味はないのだが、この男の蛇のような嫉妬深さは、自分の中にも同じ部分があることをどうしても思い知らされるようで苦手だった。
厨01
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