鋭い刃物で切った傷は、ぱっくりときれいに開く。だからこうして皮膚を醜く引き裂いて破り取るような傷を残す敵の剣戟は、なまくらだということだ。
ひとつの戦闘が終わり、じくじくと痛む左の上腕部を見る。服の上から切り裂かれた傷は、皮膚とその少し下の肉を削り取り、流れるようなとまでは言わないまでも、にじみ出るというには多少似合わない量の血が垂れていた。
「遅れを取ったんですか、鈍いですねぇ」
「ぬかせ。お前より挙げた首級は多いわ」
刀を鞘に納めながら、こちらに歩み寄り皮肉を浴びせる宗三に反射で言い返す。この程度の言葉遊びはいつものことだ。お互い特に反駁もなく、まだ赤い血と生々しい肉の色を見せる傷を覗き見る。
「汚い傷ですね。人間なら痕が残りそうだ」
「手入れで直るがな」
「そうですね、きれいに直るからよかったです。あなたに痕が残るなんて、嫌ですから」
言葉だけを聞けば、こちらを心配しているようにもとれるだろう。けれど、自分はこいつの性情をよく知っている。その言葉が、単に甘いものではないことを知っていた。
「自分がつけた痕以外のものが残るなんて、か?」
「よくご存じで。それがわかっているなら、不用意に怪我なんてしないで下さいよ。いくらきれいに直るとはいえ、あまりいい気はしない」
「無茶を言うな、戦に傷はつきものだろうが」
お互い軽口を言いながら、先を伺い進もうとする仲間に従おうとする。
その時ふと、我ながらどうかしていると思うような考えが頭をよぎった。しかし、こいつなら頷くだろう。そんな気もして、口に出す。
「……なら、傷を上書きでもするか? 俺が受けた傷以上に、肉をえぐり取って、血を流させて」
その言葉に、一瞬だけその大きな目を見開いたあと、実に楽しそうに目じりが下がる。
「そうですね、今度からそうしましょうか」
どこまでが冗談で、軽口で、どこまでが本気かわからない。けれど、どちらにせよ大した違いはない。実際にやるかどうかはともかく、抱えている気持ちは変わらないのだから。
自分が相手の気持ちがわかるように、相手もまたこちらの気持ちをわかっている。そのことを、口先で答え合わせをしているにすぎない。そんな悪趣味な言葉遊びが楽しいと思えるくらいに、相手に毒されている。それこそが、酩酊するような幸福だった。
滲む血と想いと
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