籠の鳥と形容すべきなのだろうが、ここはまるで牢屋だ。
俺たちは所詮ヒトのまがいものでしかない。それらが他に愛情を与えるとするなら、自身が受けた愛情とやらをそっくりそのまま投影するきらいがある。
宗三だってそうだとわかっていた。あいつの愛され方は異常だ。最初から贈答品として贈られ、権力の象徴として侍らされ、仕舞われ、大事にされてきた。それがあいつの知る「愛」だ。
だから今のこの状態だって、いずれこうなることは知っていた。
「ねえ長谷部、不自由なところはないですか?」
「強いてあげれば出歩けんことだな、文字通り鈍りそうだ」
「鈍ったら研いであげますよ、あなたはいつもきれいでいなくっちゃ」
こうやって部屋に閉じ込められて、自分の世界に閉じ込めるのはこいつの「愛」だ。
そして、それを受け入れたのも自分である。
主がいなくなった今、宗三のその愛を拒む理由もなくなったので。自分の「愛」を否定する理由もなくなったので。
宗三の愛が異常だと散々言ったが、自分のそれだって歪んでいるのはわかっている。
求められたい、必要とされたい、お前が一番だと言ってくれるのが至上の喜びで、どこまででも、なにがあろうとも、それこそ死ですらふたりをわかつことのないほどぴっとりと寄り添いたい。
求められたがりな自分の気質と、見た目にそぐわぬ宗三の支配者気質は、あつらえたかのように噛み合っていた。
きっと主さえいれば、お互いに優先すべきは主だと適度に距離を置けたのだろう。けれど今となっては無意味なことだ。
主はもういない。いつのまにか姿を消して、だれが気付いたかいつのまにか繋がっていた気配まで消えてしまった。
各々刀に戻るなり、ひとがたとしてひとのなりを楽しむなり、いつかくる「終わり」がくるまで楽しんでいる。
「どうせなら腰に佩いてくれよ、ずっとここにいるのも暇だ」
「……そうですね、そうだ。別に佩いているのは自分の本体である必要もないのだから」
駄目もとで言ってみた言葉に、思いのほか色よい返事が返ってきて、逆に目をむく。刀掛けからこちらの本体を取ると、そのまま腰に差した。
「ほら、あなたの主ですよ。……ふふ、一度言ってみたかった」
佩いただけでは主とは言えない。けれど、自分の本体を腰に佩いた宗三を見た途端、ぞくぞくと背中に電流が流れた。
刀の本能だ。これが、このものが自分の主だと、一瞬だけ錯覚してのことだった。
求められたい、ただお前だけだと、お前が一番だと言われたい。……刀剣として唯一の存在である、主に。
図らずしも、刀の本能のそれと、個人の欲望である「宗三に求められたい」という思いが重なって、意識が一瞬飛ぶんじゃないかと思うくらいの衝撃を受けたのだ。
「嬉しいですか?」
「……ああ、もう、死んでもいい」