抱えて眠る

 ことが終わった途端に、神経の糸が切れたようにぷつりと意識を飛ばしたその顔は、意識のある時と比べてひどくあどけない。
 隣で泥のように眠る、長谷部の顔に手を伸ばし、頬に、唇の端に愛しみを込めて指で触れる。意識はないくせに、反射なのか触れた指先に擦り寄るように顔を傾けるしぐさがこの上なく愛らしかった。
 これだけ愛し合っておきながら、今生までの約束しかしていない。
 正しく『死がふたりを分かつまで』、そこまでの関係なのだ、これは。
 もし長谷部が折れたとする。きっとその時は、もし魂とでも言うべきものがあるとしたら、主の元へ帰るのだろう。実際にそんなものがあるのかどうかは問題ではなく、長谷部の意思はそうである、ということが重要なのだ。
 僕と主を比べたときに、長谷部は絶対に僕を取ったりはしない。『へし切長谷部』の在り方として、それはできないのだ。
 それが、不満でないと言えば嘘になる。
 けれど、『へし切長谷部』を愛したのは、その愚直なまでの素直さ、素直に主を慕ういじらしさ、そこに理由があったのだ。
 叶うことなら、死が二人を分かつとも、なお側に有りたい。今世のみならず、来世でも、その先もずっと側に有りたい。
 けれど、長谷部が望むのは、あくまで人間の主の側であり、僕の側ではないのだ。
 人間に所有される『物』として、自分で居場所を決めることはできない。今は幸いにして同じ主を頂いているが、またいつ引き離されるかもわからない。
 この戦が終われば、本霊に還る。その時、この子の側にいることはできないのだ。
 先ほどまで心地よかった疲労感が、急にぐったりと体にのしかかってくる。指で触れた唇に、今度はそっと唇を重ね、震える睫毛を覗き込む。
 愛おしさと、永遠に満たされない虚脱感を埋めるように、その逞しい身体を腕の中に抱き込んで目を閉じた。

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