「え、今日も秋刀魚ですか……」
「お前、秋刀魚嫌いだったか?」
「別にそういうことはないですが、こうも続くと飽きるでしょう」
「……主の采配だからな」
「主命馬鹿のあなたに言った僕が馬鹿でした」
食膳に並んだ秋刀魚の塩焼きに文句を言う。この時期は主が兼ねている他の仕事の関係とやらで、毎年大量に秋刀魚が納品されてくる。緑の法被を着て『祭りに行ってくる』と出かけてくる主ははっきり言って異様だ。
別に秋刀魚に罪はない。不味いわけでもない、むしろ厨番はこうも毎回続く秋刀魚をちゃんと美味しく調理してくれる。
だが、飽きるものは飽きるのだ。
どうにも気が乗らないが、食べないわけにもいかず箸をつける。黙々と口に運んでいると、妙に視線を感じて箸を止めた。
「……なにか?」
「いや、今さら言うことでもないが……お前は食べ方もきれいだなと」
言われて、自分の皿と長谷部の皿の上を見比べる。
きれいだといわれるほどかはわからないが、少なくともきちんと原型を残し減りつつある自分の秋刀魚と、ぽろぽろと、多少皿の上に身をこぼしている長谷部の秋刀魚と比べれば、確かにそう言えるかもしれなかった。
「別に、あなたも食べ方が悪いわけではないじゃないですか」
「そうかもしれんが、そうではなくて」
なにか言いにくそうに、きゅっと口を引き結んだあと、すこし早口で言う。
「お前は姿も形も、食べ方すらも、存在すべてがきれいなんだな」
言い切った後ごまかすように飯を掻き込んで、おかわりをしてくるとさっさと席を立つ。
そんなことをいきなり言われて、こちらもたまらず口を押さえてうつむいてしまった。頬があつい。
普段はこちらの口説き文句にすぐ照れてしまうくせに、たまに自分からそんなことを言ってくれるから、心臓に悪いのだ。
自分は、あらゆるものからきれいだと、美しいと言われる。
普段言われる分には、いい気がするどころか、多少気鬱になる部分がある。それであるがゆえに侍らされるのか、侍らされるための存在であるがためにそうであるのか、わからないからだ。
けれど、長谷部の言葉は実直なだけに、ひねくれ屋の自覚のある自分にも、素直に刺さってくる。それが面はゆい。それが、楽しい。
さて、戻ってきたらどう口説き返してやろう。
多少熱の収まった頬に触れて、なかなか戻ってこない長谷部を楽しみに待っていた。
秋の食卓で
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