高かった日が傾き、夕焼けが目に刺さる。もうそろそろ、戻らないとまずいだろう。
「ほら則宗、帰るよ」
「ああ、すっかり日が暮れちまったな。今日は楽しかったぞ、ありがとよ」
「別に。主の命だし」
「それでもだ。僕はお前と出かけられて、楽しかったよ」
いつものからかい混じりの笑みでなく、ほんのりと慈愛を込めて微笑みかけられて、さっと加州の頬に朱がともる。夕日で気づかれないといいと思ったが、伊達に年を食ってないこのじじいは、どうせ気づいているんだろう。
「手を繋いで緊張するなんて、可愛いところもあるじゃないか、坊主」
しかも手汗もバレていた。ほんとうに、このくそしじいは。
「……悪いかよ」
「悪いなんて一言も言っとらんだろうが。可愛いと言ったんだ」
「あんたに可愛いとか言われても、なんか……違う」
加州清光は確かに可愛さというものに拘っている。けど、こいつから欲しい評価はそれだけではないのだ。でも嬉しいと思う気持ちもなくはなくて、結果、よくわからない表情になる。
その顔を見た則宗は、また心底面白そうに破顔した。
「うははは! 僕を口説くには千年早いな、坊主」
「っこの! ひとの気持ちも知らないで!」
簡単に笑い飛ばしてしまう則宗に耐えかねて、加州が叫ぶ。もうほんとに、この、くそじじいは!
何回だって思うけど、それでも好きなんだよくそじじい!
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