ちょっぴり気障なホワイトデー - 1/2

 宗三左文字は悩んでいた。
 全く期待していなかったバレンタインに、長谷部からチョコレートを受け取ってしまったのだ。しかも、自分が過去に軽口で焚き付けたも同然に。
 当然のように当日何かを用意していたわけもなく、ならばホワイトデーにお返しをするのが筋であろうということはわかってはいたが、いまいち何を返せばいいのかわからない。
 手作りの品に、既製品で返すのも申し訳ない。どうせなら、こちらも何か手間をかけたものを贈りたい。
 けれどこちらも菓子やら何やらを作るには、圧倒的に時間が足りなかった。一振りでは到底できないことであるし、菓子作りまでできる誰かを頼るとなると、完成するまでに長谷部にばれてしまう気もする。
 平生の感情の動きの少ない顔の下でぐるぐると思考を回転させながら、ふと騒がしさを感じて顔を上げる。視線を向けた先には、福島に絡まれていた日本号が目に入った。
 ……これだ、と思いついたのだ。

 

「おや、君は」
「久しいと言っていいものか。ともあれ、歓迎しますよ、福島光忠」
 顕現早々、早速庭先の一部を借りてガーデニングを始めていた福島光忠に声を掛ける。内番服に軍手を嵌めて、土いじりをしていた手を止めて、福島はこちらに向き直った。
「また会えるとは嬉しいね。仲良くやって貰えると嬉しいよ、宗三くん」
「こちらこそ。それで、早速頼りたい事があるのですが」
 その言葉で、手を止めるだけでなく、体ごとこちらに向き直る。福島の目には、燭台切と似たようなお節介焼きの光がらんらんと輝いており、光忠の刀はみなこうなのかと若干辟易とした。実休などはそこまでではなかったと思ったのだが。
「……貴方、草花を纏めるのが趣味でしょう」
「まあね。育てるよりもそっちがメインかな」
「花束を、贈りたい相手がいて。相談に乗ってはくれませんか」
 福島の目が一層輝く。思わず一歩たじろぎそうになったが、他に漏れる心配がなく、自力で贈り物を作る手伝いをしてもらえる刀といえば、まだ加入して間もないこの刀くらいしか思いつかなかったのだ。
「任せてよ! で、相手は君にとってどんな相手だい? 贈りたい内容は? 好きな色とか、込めたい気持ちはあるかい?」
「ちょっと、落ち着いてください! 今説明しますから!」
 のめり込む勢いで食いついてくる福島をいなしながら、あの刀について思い浮かぶこと、込めたい気持ちを、ぽつぽつと伝え始めた。

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