へし切長谷部とは、旧知の仲ではあるからそれなりに会話はするものの、お互い別の縁も、この本丸からできた交友関係もある。関係のない刀たちよりは親しいが、そこまで深い関係はない。その程度の関わりだったと思う。
だから、その視線に気がついた時には驚いた。何を企んでいるのか、とすら思った。
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僕はわりあい一口の時間が好きな方で、誰もいない時間を見計らって、池の上にかけられた、小さな拱橋の上で庭の景色を眺めるのが特に好きだった。ぼんやりと何も考えず、ただ水面で木の葉が揺れる様だとか、風のざわめきに耳を澄ませたりだとか、そういうことに集中していると、尖った神経も和らぐような気がしたのだ。
誰もいないはずだったそんな場所で、気配を感じてそちらに目をやる。すると、こちらをじっと見つめているへし切長谷部と目があったのだ。
目があった、と気づいた瞬間逸らされ、すぐ立ち去られてしまったが、一瞬絡んだ視線のなんとも言いようがない居心地悪さに、思わず腕をさすったことを覚えている。
敵意はなかった。敵意ではないが、なにかじっとりとした、何かを見定めるような──品定めされているような、そんな得体のしれなさを感じたのだ。
きちんと意識してみれば、一口のときではなくともちょくちょくそんな視線を感じ取れて、何なんだあの刀は、と薄気味悪さを感じ始めていた。
あれが動き出すのがもう少し遅ければ、こちらから何か用でもあるのかと聞きにいっていたかもしれない。
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